■新天地
1984年早々にHRCの役員からモトクロスチームの監督を命ぜられました。所属はテスト部隊でしたのでテスト屋としてワークスマシンの開発メンバーも兼ねていました。私が16才の五色台で初めてワークスチームを見た時から、19年経ってホンダのチーム監督に任命されたのは本当に信じられない出来事です。
ホンダモトクロスチームには1975年私とチャンピオン争いをした杉尾良文選手や1976年最後に走った浅間テストコースのモトクロスGPで、その時セニア1年生だった後の偉大なチャンピオン東福寺保雄選手など日本のトップライダーが所属しておりました。タイプの違うライダー達、若いワークスメカニックをまとめることはかなり大変でした。

レースの勝敗が9割方決まってしまうスタートは大変重要である。 スタートダッシュができる様にマシンを並べる前に地ならしをする。
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大きな夢を持ち続けたことで運命が導いてくれたのではと思っています。仕事は待ったなしの即戦力を求められておりました。約7年弱滞在していたアメリカから日本へ帰って来てホンダとスズキの社風の違い、開発システムの相違、新しい人間関係などの周辺環境にできる限り早く順応せねばなりませんでした。任命されたワークスチーム監督のプレッシャーに押しつぶされそうな感じでした。
私はできの悪い高校生でしたし直感ひらめきタイプ人間で、まして学卒でもなくこれまでモトクロス一筋でやってきました。ホンダの優秀な技術者やデーターで議論する研究開発の場に参加できないのではと不安もありました。自分の中に作っていた目に見えない圧力を跳ね返すためにアメリカで走った、見たという変なプライドとホンダを一から勉強する気概を持って仕事に励みました。
HRCの新しい職場の仲間は厳しさを表しながら快く私をバックアップしてくれました。これまでのホンダのワークスチーム監督とは違う、自分の良いところを出してチームをまとめ上げようと心に誓いチーム運営に臨みました。
例えば、ワークスマシンの機密部分は非公開だが、レース場では観客やジャーナリストにできる限りワークスマシンを見てもらうためパドックに並べる努力をしました。初めて見た五色台のモトクロスのパドックで親切にしてくれたワークスチームのメカニックが心に焼き付いています。
1987年モトクロスGPで。私がアメリカで走っていた時AMAレースで闘った仲のアメリカ人ライダーのJ.ホーリー選手(カルフォルニア出身)と久しぶりの再会でした。メーカーは違うがレース場で会うと 『Kojiーsun』 と話しかけてくれた。
1988年神宮球場のスーパークロスにて。この年アメリカでスーパークロスチャンピオンとなったR.ジョンソン選手にサポート中。雨のコンディションでスコップを持ちスタートのラインナップを待っている。(現規則ではスコップ等道具による地ならし禁止)
■努力の結果ホンダモトクロスチームには1975年私とチャンピオン争いをした杉尾良文選手や1976年最後に走った浅間テストコースのモトクロスGPで、その時セニア1年生だった後の偉大なチャンピオン東福寺保雄選手など日本のトップライダーが所属しておりました。タイプの違うライダー達、若いワークスメカニックをまとめることはかなり大変でした。
監督になったこの年、125ccクラスには背面型ロータリーバルブ方式のワークスマシンを投入しました。レースではエンジンのセッティングを出すのに大変てこずり、チャンピオンの東福寺選手に相当無理を強いる状態が続きました。これでは結果が残せないと、マシン開発チームと議論を重ねました。我々は平行してレースに投入していたピストンリードバルブ型エンジンに集中する決断をしました。東福寺選手はシーズン途中でマシンを変えた苦しみを乗り越え125ccクラスのシリーズチャンピオンを獲得しました。
一方、250ccクラスは第3戦からプライベーターチームに所属するアメリカからやってきたS.マーティン選手とトップ争いを展開した。後半戦では杉尾選手はS.マーティンの後塵を浴びる位置でフィニッシュする展開となりました。チャンピオンの決定は最終戦までもつれ込んだもののD.ベイリーやR.ジョンソンの外国人ライダー達に上位を独占され得点差を覆せずシリーズ順位は2位に終わりました。ホンダ市販車に乗るS.マーティンがアメリカから彗星のごとく現れてチャンピオンとなりました。
ホンダとしては1980年からのシリーズチャンピオンを維持できました。HRCのモトクロスチーム監督が務まるだろうかと心配して臨んだシリーズでしたが125ccクラスはヤマハからチャンピオンを取り返すことができました。
<文:増田 耕二 写真:鈴木 雅雄>
レースの勝敗が9割方決まってしまうスタートは大変重要である。 スタートダッシュができる様にマシンを並べる前に地ならしをする。
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